青春のように、いつまでも胸にあり続ける『風が強く吹いている』

お気に入りの作品はたくさんあり増えていく一方ですが、私の中ではもう何年も、上位に居続けているのが、三浦しをん著の『風が強く吹いている』です。

ストーリーは、ひとことで言ってしまえば、「陸上未経験者も含む出来立ての駅伝部が、たった10人だけで箱根駅伝を目指す」お話。これだけ聞けば、駅伝を知る人にとっては、鼻で笑うものです。有り得ない、でしかないものです。お正月の風物詩であるあの箱根駅伝を目指し、ずっと練習を積み重ねてきたものにとっては、ファンタジーもいいところでしょう。当然、作中でも、読者が持つツッコミは満載です。しかし、それも含めて、この作品は魅力にあふれています。

素人同然のものが成り行きで箱根を目指すのも、それが一人でもかけたら参加できないたった10人という危うさも、走ること以外の柵が多いのも。箱根だけを目指して邁進しているアスリートではなく、どこにでもいる大学生たちの集まりだからこそ親近感が持て、有り得ないなんてツッコミもどこかにいってしまいます。テンポよく進む展開や会話に、一人ひとりの登場人物がどんどん読み手の中に入って来くるので、彼らの箱根がまるで自分のもののようにすら感じてきます。

天才だけど卑屈なランナー、漫画オタク、運動経験のない黒人留学生、モテたいばかりの双子、人畜無害なお人好し、司法試験合格済みの秀才、ヘビースモーカー、虚勢ばかりの小心者、そして、爆弾を抱えるランナー。この10人の9ヵ月の様子は、おバカでありながらも愛しく思える、最高の青春だと感じます。

漫画、舞台、映画、そして2018年秋からはアニメにと、小説が刊行されてから10年以上たっても人気が衰えない作品ですが。私の中でもまだまだ、不動の地位にいてくれそうです。

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